白夜の国の贈り物 ?@

小池香緒里

現在、私は大学で社会福祉を学んでいます。福祉を学ぶ動機として思い描いているのは、一人一人がその人固有の苦悩や喜び、経験など築いてきたものを封じこめることなく社会の貴重な賜物として活かして、一人一人が社会の豊かさを生み出し、共にわかちあえるような世界をみんなで創っていくことです。
異様にも思える暗さが、今の日本を覆っているように思います。ですから、立ち止まって深く話しこんだり、考えこんだりする心の余裕が必要だと私は思うのです。それぞれの心の中でも、家庭や教育の現場、そして社会のなかでも。
自然の語りかけに耳を傾けたり、芸術の美しさに身をゆだねたり、本を読んで未知の世界に夢をはせたり、静寂の中で自分の心と対話してみたり・・・。小さな頃フィンランドにいた私は、そんな中で育ちました。私は人として守るべき事を学び、自己をみつけ、他人や社会を思いやり、許し、共存し、また生きる意味を考える事を学べた気がします。自自己中心的な欲求を満たすだけで、心が豊かになるとは思えません。自分の心をないがしろにして周りの欲求に叶うだけでどうやって生き続けていかれましょうか。人生は生きることの明るい喜びと、暗い哀しみが祈り重なっていくものだと思います。そしてそれは、うち続く不安や疲労感ではなくて、心からの安らかな幸せであるはずなのです。
子どもの頃、私はフィンランドに暮らしました。フィンランドでの生活体験の意味は大きく、現在においても私の何かにいきづまった時、私はフィンランドでの日々を思い出します。

冬の教会の荘厳な空気や木のきしむ音、オペラハウスの天井で舞っていた天使たち、クリスマスに白い庭を点々と飾っていたろうそくの灯り、もみの木のにおい、大の字に寝転がって見た空から落ちて雪のひとひら、ホームパーティーで背伸びしてきいていた大人の会話、本選びから始まり、チームワークに苦戦して、共にプレゼントを贈ったクラスメートたち、自然と生涯学習をしてくれて私たちの目を社会に向けさせていった素晴らしい先生方。そうしてあのような一人一人がその人らしく輝ける、人間らしく生きていけるヒューマニズムのしみ通った社会を夢見るのです。大人が子供を「いい子」に育ててしまうことのない地域社会、誰もが「私は私だ」と穏やかに生をまっとうできるケアシステム、女性が安心して子育てをし、仕事に復帰できる環境、犯罪の加害者・被害者が孤立することなく更正できるコミュニティー、人が逃げたくても行く崎もなくて、自ら命をとじようなどと思うことのない社会、様々な子が互いの長所を発見し、のばし、助け、助けられる喜びをかみしめられる教育。そんな社会の幸福のために、私はこれからも日々励んでいきたいと思います。
どうか、その大切な一部であるこの語学教室の皆様、これからもよろしくお願いします。

(本稿はOSV22に掲載されたものです)