『多胎児家庭支援の地域保健アプローチ』

大木秀一(石川看護大学)著、B5判、 225p、2933円(税込)

社会全体の枠組みの中で多胎出産にまつわる様々な現状や課題を幅広く整理した本。
多胎児に関わる育児支援者、医療関係者の必読書。

多胎児家庭の支援に向けた書籍は少ないながらも確実に増えています。その多くは、主としてすぐに役立つ実践的なハウツーやお役立ち情報、あるいはマニュアルが中心です。多忙な実践の中で早急の課題を考えたときに、すぐに役立つ本が有用であることは言うまでもありません。しかし、社会全体の枠組みの中で多胎出産にまつわる様々な現状や課題を幅広く整理した書籍は見当たりません。また、多胎児家庭への育児支援の具体的な戦略を書いたものもありません。つまり、「多胎児家庭への支援とは具体的にどうすればよいか」と言う目の前の状況にだけ焦点が当てられ、「そもそも多胎児家庭への支援がなぜこれほど社会的な問題になってきたのか」と言うより大きな枠組みからアプローチした検討は少ないのが現状です。単著にすることで広く全体像を俯瞰するように心がけました。(大木秀一、「はじめに」より)

目 次

第1章 多胎に関する基本知識
1)ふたごの卵性
2)ふたごの膜性
3)ふたごの発生頻度
4)ふたごの卵性別の割合の推定方法
5)多胎の研究
6)ツインレジストリー

第2章 保健医療系専門雑誌の特集からみる多胎出産の課題
1)特集の紹介
2)不妊治療と多胎出産の今日的課題

第3章 多胎出産の人口動態・・・国全体に与える影響を数値で表現する
1)国内の多胎出産の動向
2)先進諸国の多胎出産の動向
3)多胎出産と母子保健指標
4)本章のまとめ

第4章 不妊治療と多胎出産
1)国家レベルの多胎児データベースの必要性
2)国内の現状
3)国際産科婦人科連合(FIGO)の多胎妊娠に関する倫理ガイドライン
4)ASMR(アメリカ生殖医学会)の多胎育児に関するファクトシートChallenges of Parenting Multiples
5)自然妊娠による多胎と生殖補助医療による多胎の予後
6)不妊治療に伴うより大きな課題
7)本章のまとめ

第5章 多胎妊娠と経済コスト
1)早産・低出生体重児の医療コスト
2)不妊治療、特に生殖補助医療に伴う医療コスト
3)多胎妊娠に伴う母子の医療コスト
4)多胎児の退院後の様々なコスト
5)多胎児家庭そのものに強いる負担
6)本章のまとめ

第6章 多胎児家庭を取り巻く社会的・心理的な環境
1)不妊治療と多胎妊娠に伴う諸問題
2)多胎出産に伴う母親のメンタルケア
3)多胎児の予後・成長と発達
4)多胎児の育児
5)多胎児観について
6)本章のまとめ

第7章 ふたご・多胎児の権利の宣言とニーズの声明
1)ISTSとCOMBO
2)声明に至る経過
3)ふたご・多胎児の権利の宣言とニーズの声明の内容
4)研究対象としてのふたご・ふたご家庭
5)個人の利益と公共の利益
6)本章のまとめ

第8章 海外での多胎児家庭支援の全国的組織
1)海外の多胎育児支援組織の紹介
2)海外の多胎育児支援組織の活動内容から分かること
3)本章のまとめ

第9章 国内での多胎児家庭支援活動の流れ
1)養育者の立場からの活動
2)行政機関・医療機関主導の多胎育児支援
3)本章のまとめ

第10章 多胎児家庭支援のガイドラインと根拠に基づいた多胎児家庭支援
1)MBFのガイドライン
2)MBFのガイドライン(その後)
3)最新のBest Practice Guideline
4)根拠に基づいた多胎児家庭支援
5)様々な専門職の養成
6)本章のまとめ

第11章 多胎児家庭を取り巻く社会的な環境が与える影響
1)様々な格差と健康度
2)生物心理社会モデル
3)ハイリスクストラテジーとポピュレーションストラテジー
4)ハイリスクストラテジーとしての多胎児家庭の支援
5)具体的にどのように多胎児家庭支援を実現していくのか
6)本章のまとめ

第12章 いしかわ多胎ネットの構築
1)いしかわ多胎ネットの構築に向けて
2)「いしかわ多胎ネット」について
3)設立の波及効果
4)本章のまとめ

第13章 多胎児家庭への支援がなぜ社会全体の問題になるのか
1)健やか親子21と多胎児家庭への育児支援
2)多胎児出産に伴う公衆衛生学的な課題
3)多胎児家庭への支援の新たな方向性