Päivää(パイヴァー)!こんにちは!

フィンランド語で4月はhuhtikuu(フフティクー)と言うの。kuuは「月」という意味で、huhtiはhuhta「焼畑」という語が由来よ。
以前、フィンランドではこの時期に焼畑を行ない、土地を開墾して農業をする風習があったの。
人々の生活に直結している月名は他にもあるのよ。

さて、今日もフィンランド語の謎を解明しなくちゃ。
ハンナならどんな難題も解決できるんだから!

20回目の依頼人は、初登場のチエミさん。
フィンランドに住んでいたことがあるそうよ。

 

🔎Case #20『前につくか、後ろにつくか』

ハンナ:こんにちは、はじめまして。

チエミ:こんにちは、チエミと言います。私、夫の仕事の関係で、2年ほどヘルシンキに住んでいたことがあるんです。

ハンナ:あら、そうですか!じゃあ、フィンランド語も話せるんですか?

チエミ:いいえ、向こうではほとんど英語を使っていたので、あまり・・・でも、フィンランド語に興味はあって、帰国してからも家事やパートの合間を縫ってちょこちょこ勉強しています。子供がまだ小さいので、本当に少しの時間しか取れませんけど。

ハンナ:なるほど。でも、勉強を続けるのはいいことですね。さて、今日はどのようなご依頼ですか?

チエミ:最近、簡単なフィンランド語で書かれたニュースを読めるサイト*1を知って、ちょっとずつ読むようにしているんです。そこに、Pekka matkustaa ympäri Suomea.(ペッカ マトゥクスター ユンパリ スオメア)という文がありました。Pekkaは男性名、matkustaaは「旅行する」、Suomeaは「フィンランドを」、ここまでは合ってますよね?

ハンナ:はい、その通りです。

チエミ:ところが、3つ目の単語ympäriの意味がどうもしっくりこないんです。辞書で調べると「~の周り」という意味で、そのままこの文に当てはめると「ペッカはフィンランドの周りを旅行している」となります。ちょっと変ですよね?フィンランドの周りって、スウェーデンとかエストニアとかロシアとか?記事の文脈から考えても納得がいかなくて。ハンナさん、この謎が解けますか?

ハンナ:トタ、トタ*2・・・わかったわ!
謎を解くカギは「前につくympäri」よ!
チエミ:前につくympäri?どういう意味ですか?
ハンナ:チエミさん、ympäriは確かに「~の周り」という意味もあります。例えば、こんな時に使います。

Koira juoksee talon ympäri.(コイラ ユオクセー タロン ユンパリ)
犬   走る    家の  周り
「犬が家の周りを走っている。」

この文の場合、talon ympäriのように、ympäriは「家」という名詞の後にくっついて「~の周り」という意味を表します。日本語と単語の順番は同じですね。
しかし、ympäriは名詞の前にくっつくこともあるんです。その例が、チエミさんの教えてくれた文です。

Pekka matkustaa ympäri Suomea.(ペッカ マトゥクスター ユンパリ スオメア)
ペッカ  旅行する    ?    フィンランドを

この場合、ympäriは後ろの名詞Suomeaにくっついて「~中」という意味を表すんです。つまり「フィンランド中を」という意味。文全体の意味は「ペッカはフィンランド中を旅行している。」という意味だったんですよ。

チエミ:あー、確かにそうすればしっくりくるけど、へえ~、名詞の前に来るか後ろに来るかで意味が違うんですか!
ハンナ:こういう単語はそんなに多くありませんが、気づきにくいこともありますね。例えば英語で、around「~の周り」が名詞の前に来たり後ろに来たりして、意味も変わるってことはありえませんよね。フィンランド語の特色がここにも現れていると私は思います。
チエミ:そうですね。英語と似たようなところもあるのに、フィンランド語ってヘンテコな言葉(笑)。でもそこが面白いのよね。ニュースも根気よく読んでいくことにします。ハンナさん、ありがとうございました!

謎は解決!次はどんな依頼が舞い込んでくるかしら?次回もお楽しみに!

*1 フィンランドの国営放送Yleが公開しているSelkouutiset(セルコウーティセット)のこと(https://yle.fi/uutiset/osasto/selkouutiset/)
*2 トタ(tota):日本語の「えーっと」に当たる語tuota(トゥオタ)のくだけた発音