フィンランド語探偵ハンナ 第18回

Päivää(パイヴァー)!こんにちは!

クリスマスの前に、アドベントカレンダーを買って楽しむ人もいるんじゃないかしら。フィンランドにももちろんあるわ。毎日、1つずつ窓を開けてお菓子や小さいお人形を取り出すのって、大人でもワクワクするわよね。1日1つなんて待ちきれない!って気持ちにもなったり。今年はお友達からムーミンのアドベントカレンダーをいただいて、とっても嬉しかったわ!

さて、今日もフィンランド語の謎を解明しなくちゃ。ハンナならどんな難題も解決できるんだから!

さて、18回目の依頼人は、会社員のケンタさん。何やら様子がおかしいわね……。

🔎Case #18:『比べてみると』

ケンタ:こんにちは、お久しぶりです……。

ハンナ:こんにちは!今日はどういうご依頼かしら?あら、何だか元気がなさそうだけど、どうかしたの?

ケンタ:ええ…先日ここで話した、友人のマイヤ、覚えてますか?実は、あの後しばらくして僕たちは付き合うことになりました。彼女は日本に住みたがっているので、いずれは結婚できたらなぁとか、思っていて・・・。

ハンナ:ええ~、そうだったの!!良かったじゃない!

ケンタ:はい、そうなんですけど、最近ちょっとしたことでケンカしちゃって…フィンランド語の言い回しの問題かと思うので、今日はそのことを相談するために伺いました。

ハンナ:だから元気がないのね。どういうこと?

ケンタ:フィンランドにいるマイヤとビデオチャットをしていた時のことです。僕たちの共通の友人の話をしていて、僕は何も考えずに、その友人のことを美人だと言いました。そうしたら、マイヤは「私よりも?」と少し機嫌を悪くしてしまったんです。

僕はフォローしようと、覚えたてのフィンランド語で「僕は今、一番美しい女性としゃべっているよ」と言いました。するとマイヤは「比べられても嬉しくないわ!」と怒って早々にチャットを終わらせてしまいました。それから今日まで数日間、彼女から連絡がないんです。がんばってキザなことを言ってみたのに、マイヤはなぜ怒ってしまったのか、何だか腑に落ちなくて。

ハンナ:なるほど。ねえ、ケンタさんが言ったキザなセリフをここに書いてみてくれない?

ケンタ:はい…これです。

Nyt      juttelen            kauniimman         naisen       kanssa.

        私はしゃべる     最も美しい(?)  女性と       一緒に

(ニュット ユッテレン カウニーンマン ナイセン カンッサ)

「僕は今、一番美しい女性としゃべっているよ」(?)

ケンタ:最近、比較級と最上級の勉強をしているので、使ってみようと思って。「美しい」という意味の形容詞kaunis(カウニス)の最上級、「一番美しい」はkauniimman(カウニーンマン)じゃないんでしょうか?ハンナさん、この謎が解けますか?

ハンナ:トタ、トタ*1・・・わかったわ!

謎を解くカギは「比較級と最上級の微妙な違い」よ!

ケンタ:え?どういうことですか?

ハンナ:ケンタさん、あなたはkauniimman(カウニーンマン)と言ったのよね?これはkaunis「美しい」の比較級、つまり「より美しい」という意味よ。最上級の「一番美しい」はkauneimman(カウネインマン)なのよ*2

ケンタ:えっ、あ、ああ~!スペルが微妙に違う!

ハンナ:そう。比較級と最上級は、場合によってはとても似た形をしているの。マイヤさんはケンタさんの言葉を「僕は今、(その友人より)美しい女性としゃべっているよ」と解釈して、「比べられても嬉しくない」と言ったんじゃないかしら。「○○より美しい」と「一番美しい」。ほんの少しの違いだけど、女心って複雑だからねー。

ケンタ:比較級と最上級がよく似ている、というのは何となく知っていたんですが、いざ使ってみると本当によく似ていますね。でも、これでマイヤが怒った理由がわかりました。ちゃんと説明すれば機嫌を直してくれるかな。

ハンナ:きっと大丈夫よ。今度からは気をつけてね。比較級と最上級のことだけじゃなくて、他の女の子を不用意にほめたりしないこと。

ケンタ:うーん、僕には色々な勉強が必要みたいですね・・・とにかく、これで仲直りできそうです!ハンナさん、ありがとうございました!

謎は解決!次はどんな依頼が舞い込んでくるかしら?次回もお楽しみに!

 

*1 トタ(tota):日本語の「えーっと」に当たる語tuota(トゥオタ)のくだけた発音

*2 形容詞は、修飾する名詞の役割によって形を変えます。この場合は単数属格形という形で現れています

 

フィンランド語探偵ハンナ 第17回

Päivää(パイヴァー)!こんにちは!

10月のイベントとして日本でもすっかり定着したのがハロウィン。フィンランドでも仮装をしたり、子供たちがお菓子をもらったりしているんだけど、そこまで盛大に祝われるわけではないわね。日本では繁華街に集まってワイワイ騒ぐのが恒例になってるけど、そういうこともしないの。ハロウィンより春のイースターの方が盛り上がるかしら。

さて、今日もフィンランド語の謎を解明しなくちゃ。ハンナならどんな難題も解決できるんだから!

17回目の依頼人は、ミリタリー好きな高校2年生のマサト君よ。

🔎Case #17:『東西南北プラス4

ハンナ:はじめまして、こんにちは。えーと、マサト君ね?

マサト:はい、はじめまして!探偵さんは日本語とフィンランド語のバイリンガルなんですよね?羨ましいです。

ハンナ:ハンナと呼んでいいわよ。マサト君はどうしてフィンランド語を勉強しているの?

マサト:僕、実はミリタリーオタクってやつで、世界の色々な兵器や軍隊のシステムなんかに興味があるんです。最近は特に、フィンランドの軍や戦争の歴史を勉強していて、大学ではその研究をしたいと思っているくらいで。それでフィンランド語も始めました。

ハンナ:へーえ。軍や戦争については、私よりずっと詳しそうね。それで、今日はどんなご依頼かしら?

マサト:今年の夏休みに、ヘルシンキ大学のサマースクール*1に参加できるチャンスがあって、2週間だけフィンランド語を勉強してきました。初日、空港から宿に向かおうとタクシーに乗った時に、不思議なことがあったんです。

僕が向かおうとしていたのは安いユースホステルで、タクシーの運転手さんはその場所をよく知らないようでした。僕は「ここから北東の方角にある」と伝えようとしました。「北」がpohjoinen(ポホヨイネン)、「東」がitä(イタ)だとは知っていたので、それをくっつければいいかなって思って、「北東」という意味でpohjoinen-itä(ポホヨイネン イタ)と言ったんです。そうしたら、運転手さんは混乱した様子で「北?東?どっちなんだ?」と英語で尋ねてきました。地図を見せると場所がわかったようで、無事に目的の宿にはたどり着けたんですけど、pohjoinen-itäでは通じなかったんですよね。英語ではNorth-Eastと言ったら通じるのに。こんな些細なことですが、僕にはどうもわからなくて。ハンナさん、この謎を解いていただけますか?

ハンナ:トタ、トタ*2・・・わかったわ!

謎を解くカギは8方位の言い方」よ!

マサト:8方位?東西南北と、あと4つ?

ハンナ:マサト君、東西南北を表す単語は知ってるのよね?

マサト:はい、「北」がpohjoinen(ポホヨイネン)、「東」がitä(イタ)、「南」がetelä(エテラ)、「西」がlänsi(ランシ)、ですよね?

ハンナ:正解よ。8方位というのは、そこに「北東」、「南東」、「南西」、「北西」を加えたもの。マサト君が言ったように、英語では「北」のNorthと「東」のEastをつなげてNorth-Eastと言えば「北東」を表現できるわ。でもね、フィンランド語は8方位の単語が全て違うの。

マサト:ええ?!「北」や「東」と「北東」は全然違う単語ってことですか?

ハンナ:そうなの。マサト君、このリストを見て。

北=pohjoinen(ポホヨイネン)

北東=koillinen(コイッリネン)

東=itä(イタ)

南東=kaakko(カーッコ)

南=etelä(エテラ)

南西=lounas(ロウナス)

西=länsi(ランシ)

北西=luode(ルオデ)

マサト:ほんとだ!4方位の間にある方位は、全然関係ない単語に見えますね。

ハンナ:こういう言語は世界的にも珍しいと思うんだけど、フィンランド語は8方位全て、それぞれ覚えないといけないのよね。

マサト:日本語と英語を基準に考えていたから、とっても不思議に見えますけど、フィンランド人にとってはこれが常識なんですね。8方位の単語を見るだけで、自分の視野が広がったような気がします。難しいけどフィンランド語の勉強をもっとしていこうと思いました。ハンナさん、ありがとうございました!

謎は解決!次はどんな依頼が舞い込んでくるかしら?次回もお楽しみに!

*1 サマースクール:通常6月~8月に大学で開かれる語学講座。フィンランド語ではkesäyliopisto(ケサユリオピスト)

*2 トタ(tota):日本語の「えーっと」に当たる語tuota(トゥオタ)のくだけた発音